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東京地方裁判所 平成10年(ワ)26656号・平11年(ワ)14032号 判決

主文

一  被告は、原告らに対し、それぞれ、金四三四万二五五〇円及びこれに対する原告飯田隆については平成一〇年一一月二七日から、原告飯田まき子については平成一一年七月二三日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、これを二分し、その一を被告の負担とし、その余を原告らの負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一原告の請求

被告は、原告らに対し、それぞれ、金一〇六九万三〇〇〇円及びこれに対する原告飯田隆については平成一〇年一一月二七日から、原告飯田まき子については平成一一年七月二三日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、原告らが、被告との間において土地建物の売買契約を締結し、右売買契約の履行等に関して被告の従業員であった宇佐美博(以下「宇佐美」という。)と交渉していたところ、宇佐美に、右売買契約の頭金の追加、及び他の土地建物の売買契約の手付金等名下に金員を騙取されたと主張し、被告に対し、民法七一五条及び有限会社法三二条(商法七八条二項、民法四四条一項)に基づき、損害一〇六九万三〇〇〇円の賠償を求め、予備的に、不当利得返還請求権に基づき、当初の売買契約の手付金二〇〇万円の返還を求めた事案である。

一  争いのない事実等(末尾に証拠等を掲記するもの以外は争いがない。)

1  被告は、不動産の売買、賃貸借及びその仲介等を目的とする有限会社であり、宇佐美は、平成九年四月当時、被告の従業員であり、被告の営業業務を担当していた。

2  原告飯田隆(以下「原告隆」という。)は、平成九年四月八日ころ、本人兼原告飯田まき子(以下「原告まき子」という。)の代理人として、別紙物件目録一記載の土地建物(以下「池袋の物件」という。)を、代金は三四二四万七五〇〇円、手付金は二〇〇万円、残金三二二四万七五〇〇円は移転登記完了までに支払う、引渡及び所有権移転登記は同年五月末日に行う、原告らは代金残金を住宅ローン借入により支払う、万一住宅ローン借入が不可能の場合は被告は受領した金員を原告らに返還して契約を解除する、住宅ローン借入期限は同年五月八日までとするなどの約定で買い受ける旨の契約(以下「本件売買契約」という。)を締結し、同日、被告に対し手付金として二〇〇万円を支払った(手付金の額、住宅ローン借入の特約があることを除く約定につき、乙一)。

3  原告まき子は、これに先立ち、原告隆に対し、本件売買契約の締結及びその履行に関する代理権を与えた。

4  原告隆は、本人兼原告まき子の代理人として、同年一二月一七日ころから平成一〇年四月二二日ころまでの間に、宇佐美に対し、本件売買契約の頭金の追加、別紙物件目録二記載の土地建物(以下「松島の物件」という。)の売買契約の手付金及び仲介手数料等として、合計八六九万三〇〇〇円を交付した(甲四ないし六、八の1、2、九の1、一〇、一四、乙四、証人宇佐美、原告隆本人)。

二  争点

1  被告の不法行為責任の有無

(原告らの主張)

(一) 被告宇佐美は、被告の従業員であり、被告の営業業務を担当していたところ、次のとおり、原告らから、本件売買契約の頭金の追加、松島の物件の売買契約の手付金及び仲介手数料の名目で、合計八六九万三〇〇〇円を騙取し、また、本件売買契約の手付金を松島の物件の売買契約の代金に振り替え、総計一〇六九万三〇〇〇円を騙取したものであり、宇佐美の右行為は被告の事業の執行につきされたものであるから、被告は使用者責任を負う。

(1)  宇佐美は、平成九年一二月一七日ころ、原告隆から、本件売買契約の頭金の追加として、二〇〇万円を受領した。

(2)  宇佐美は、平成一〇年三月二七日ころ、原告隆から、本件売買契約の頭金の追加として、二〇〇万円を受領した。

(3)  宇佐美は、その後、原告隆に対し、本件売買契約を解除して、松島の物件の売買契約を締結することを勧め、同年四月二二日ころ、松島の物件の売買契約を締結させ、本件売買契約に関し受領済みの六〇〇万円をその代金に充当させ、さらに代金の一部として四〇〇万円、仲介手数料として六九万三〇〇〇円を受領した。

(二) 宇佐美が平成九年九月ころから同年一二月ころまでの間に被告を退職したとしても、宇佐美は、それ以降も、被告代表者から原告らとの取引を行う権限を与えられており、そうでないとしても、被告代表者らは原告に対し宇佐美が被告を退社したことを知らせていないから、宇佐美の右行為は被告の事業の執行につきされたものである。

(三) 被告代表者には、不動産業者の代表取締役として、原告らに対し、取引担当者である宇佐美の在職及び権限等につき連絡し、取引の経過につき報告、確認すべき注意義務があるにもかかわらず、これらの義務を怠った過失があり、それによって被告宇佐美が詐欺行為を行ったのである。被告代表者の右行為は被告の事業の執行につきされたものであるから、被告は不法行為責任を負う。

(被告の認否及び主張)

(一) 右(一)の事実のうち、宇佐美の行為は知らない、その余の事実は争う。右(二)、(三)は争う。

(二) 宇佐美は、平成九年一二月ころ、原告隆に対し、既に被告を退職したことを告げている。

したがって、宇佐美のそのころの行為は、被告の事業の執行につきされたものではなく、原告隆もこの事実を知っていた。また、宇佐美は、有限会社大伸建設(以下「大伸建設」という。)の代表者に就任すべき者として、松島の物件の売買契約の仲介を行ったものである。

2  被告の不法利得の有無

(原告らの主張)

(一) 宇佐美は、平成一〇年二月一日ころ、原告らに無断で、被告との間において、本件売買契約を解除し、手付金の返還額を一五〇万円と合意した。

(二) 原告隆は、本人兼原告まき子の代理人として、同年三月三〇日ころ、宇佐美がした被告との間の本件売買契約の解除のみを追認した。

(被告の認否及び主張)

(一) 右(一)の事実は認め、(二)の事実は否認する。

(二) 原告らの主張(一)と同じ

(三) 被告は、平成一〇年二月一日ころ、宇佐美に対し、合意された手付金返還額一五〇万円を交付した。

(四) 原告隆は、本人兼原告まき子の代理人として、同年三月三〇日ころ、宇佐美がした被告との間の本件売買契約の解除及び手付金の返還額の合意を追認した。

3  原告らの損害額

(原告らの主張)

原告らは、総計一〇六九万三〇〇〇円の損害を被った。

4  過失相殺の可否

5  損害のてん補の有無

(被告の主張)

前記2の(二)ないし(四)と同じ

第三当裁判所の判断

一  本件売買契約の履行の経過等について

1  前記第二の一の事実と証拠(甲一、三の1、2、四ないし六、八の1、2、九の1ないし4、一〇、一二、一三の1ないし4、一四、乙一ないし五、一一、一二、証人宇佐美、原告隆本人、被告代表者)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(一) 原告隆は、平成九年四月八日、被告勝田台店において、本件売買契約を締結した際、宇佐美の上司である担当者から、住宅ローンの借入先として都市銀行を予定しており、その手続は被告において行う旨の説明を受けた。また、原告隆は、右担当者から、本件売買契約の履行等については宇佐美が担当する旨述べられ、宇佐美を紹介された。

(二) 原告隆は、その後、宇佐美から連絡がなく、住宅ローン借入期限が経過するため、同年五月八日、宇佐美に電話をしたところ、宇佐美から、被告に対する売主から了解を得ているので心配はないと述べられた。しかし、原告隆は、その後、宇佐美から、電話で、自分でも住宅ローンを組めるところを探して欲しいと述べられ、かつて住宅ローンを借り入れたことのある株式会社第一勧業銀行東新宿支店(以下「第一勧業銀行」という。)の担当者を紹介し、宇佐美に対し、同支店との間の住宅ローンの借入の交渉を依頼した。

(三) 原告隆は、同年夏ころ、宇佐美と連絡を取るため、被告勝田台店に電話をしたところ、電話に出た同店の従業員から、宇佐美が本社に移った旨述べられたことから、それ以降、宇佐美との連絡は宇佐美の携帯電話に電話することとした。

(四) 宇佐美は、同年一〇月ころ、被告を退職したが、被告代表者は、宇佐美との話合いにより、引き続き本件売買契約の履行等を宇佐美に担当させることとした。宇佐美は、原告らに対し、被告を退職したことを告げなかったし、被告代表者も、被告従業員に対して、その旨を原告らに連絡させなかった。なお、被告代表者は、宇佐美の在職中、宇佐美が被告の物件情報等を利用したり、被告の顧客と被告を通さないなどして、個人的な取引をしているとの噂を聞いており、宇佐美の勤務態度等からもその疑念を抱いていた。

(五) 宇佐美は、同年一二月ころ、原告隆に対し、頭金が少なすぎるため住宅ローンが組めないので頭金を追加するように虚偽の事実を述べ、頭金二〇〇万円の追加を要請した。原告隆は、右要請に応じることとしたが、忙しいため被告の本店等に行けないと述べると、宇佐美は、自分が取りに行く旨述べた。原告隆は、同年一二月一七日ころ、首都高速神田橋出口付近において、宇佐美と待ち合わせ、宇佐美が運転してきた自動車の中で、宇佐美に対し、二〇〇万円を交付し、宇佐美から、同人名義の手書の仮領収書を受領した。宇佐美は、右二〇〇万円を領得した。

(六) 原告隆は、同月二〇日ころ、大腸ガンに罹患していることが発見され、平成一〇年一月八日ころから同年二月一五日ころまで入院し、手術を受けた。原告隆は、同年三月二日、勤務に復した。なお、原告隆は、平成九年暮れころ、第一勧業銀行の担当者から、池袋の物件には問題があり、同行としては住宅ローンを組めないとの回答を得ていた。

(七) 被告代表者は、平成一〇年一月ころ、住宅ローン借入が余りにも遅れていたことから、本件売買契約を解除したほうがよいと考えた。被告代表者は、宇佐美にその旨を伝えたところ、宇佐美は、同年二月一日ころ、原告らに無断で、被告代表者に対し、原告らが本件売買契約を解除することに同意し、手付金の返還額につき一五〇万円で同意した旨を述べ、被告代表者から一五〇万円を受領し、被告代表者に自己が偽造した原告ら作成名義の解約合意書(甲三の1、乙二)、領収書(甲三の2、乙三)を交付した。宇佐美は、原告らに右一五〇万円を交付せず、これを領得した。

(八) 宇佐美は、同年三月ころ、原告隆に対し、頭金を六〇〇万円にすれば千葉方面の金融機関で住宅ローンを組むことができると虚偽の事実を述べ、更に二〇〇万円の交付を要請した。原告隆は、宇佐美の言を信じ、右要請に応じることとし、二〇〇万円を用意した。

(九) 宇佐美は、他の物件の売買契約の仲介名下に、更に金員を騙取しようと考え、同年三月二七日ころ、原告隆に対し、万世橋付近の喫茶店において、池袋の物件につき住宅ローンを組むのが非常に困難である旨伝え、松島の物件を紹介し、池袋の物件に代えて松島の物件を購入することを勧めた。原告隆は、宇佐美の説明を受け、池袋の物件につき住宅ローンを組むことができないならば松島の物件に変更することもやむを得ないと考え、同日、松島の物件を購入する旨の返事をした。原告隆は、同月三〇日ころ、万世橋付近の喫茶店において、宇佐美に対し、松島の物件の売買契約の頭金として、用意していた右二〇〇万円を交付し、宇佐美から、同人名義の手書の仮領収書を受領した。原告隆は、この際、宇佐美に対し、本件売買契約を解除する旨述べた。

(一〇) 宇佐美は、同年四月一五日ころ、原告ら宅に架電し、松島の物件の売主と話がついたので売買契約の締結をしたい旨を述べた。宇佐美は、同月二二日ころ、万世橋付近の喫茶店において、松島の物件の売買契約の締結を装い、原告隆との間において、本件売買契約に関し受領済みの六〇〇万円をその手付金に充当する旨合意し、さらに、原告隆から、右売買契約の頭金として四〇〇万円、仲介手数料として六九万三〇〇〇円を受領した。宇佐美は、原告隆に対し、予め作成していた有限会社秋田住建作成名義の原告ら宛の金額四〇〇万円の領収書(甲四)、同社作成名義の原告ら宛の金額六〇〇万円の手付金の領収書(甲五)を交付し、自己作成名義の金額六九万三〇〇〇円の手書の仮領収書(甲六)を作成して交付した。しかし、宇佐美は、右金員受領直後、原告隆に対し、売主側の事情により、同日は売買契約書を作成できないので、売買契約書は後日作成して送付する旨述べた。宇佐美は、右四六九万三〇〇〇円を領得した。

2  証人宇佐美は、平成九年一二月ころ、原告隆に対し既に被告を退職したことを告げており、そのころから、原告隆に対し松島の物件の売買の話をしていたものであり、そのころ以降の売買の交渉は、被告の業務とは関係なく、自己の業務として行ったものである旨供述し、乙第一二号証にも、退職を告げた時期を同年九月ころとするほか、同旨の記載がある。しかし、証人宇佐美は、他方において、本件売買契約の解除等を原告らに無断で行い、前記解約合意書(甲三の1、乙二)、前記領収書(甲三の2、乙三)を偽造したことを供述しているが、この供述は右供述と矛盾するものである。また、証人宇佐美の供述は、あいまいであり、相反する趣旨のものが多い。証人宇佐美の右供述及び乙第一二号証の記載は、前掲各証拠に照らして容易に採用できない。

なお、前掲各証拠によれば、原告隆は、遅くとも平成一〇年七月初めころには、宇佐美に騙されたと考え、宇佐美と金員の返還の交渉を始めており、同年八月一日に至って初めて被告に連絡を取ったことが認められるが、原告隆は、本件売買契約の履行等について、専ら宇佐美と交渉しており、被告の他の従業員と交渉をしたことがなかったのであるから、原告隆が先ず宇佐美と交渉を始めたことも無理からぬ面があるものと考えられ、右事実をもって、原告隆において宇佐美が被告を退職したことを知っていたとか、宇佐美個人と松島の物件の売買の話をしていた疑いがあるということはできない。

二  被告の責任について

1  右一の1の事実によれば、宇佐美は、被告を退職した後においても、引き続き本件売買契約の履行等に関する業務を担当し、原告らに無断で本件売買契約の解除等を行なった後も、この事実や被告退職の事実を原告に告げないで、被告の営業担当者を装って松島の物件の購入を勧めるなどしたのであるから、宇佐美の前記行為は、その外形からみて被告の業務の執行の範囲内に属するものというべきである。

被告は、原告隆において宇佐美の右行為が被告の事業の執行につきされたものでないことを知っていた旨主張するが、右主張に沿う証人宇佐美の前記供述及び乙第一二号証の前記記載は右一の1のとおり容易に採用できず、他に右事実を認めるに足りる証拠はない。

したがって、被告には、使用者責任に基づき、原告らが被った損害を賠償する責任がある。

2  右一の1の事実によれば、被告代表者(代表取締役)は、宇佐美が在職中被告の物件情報等を利用するなどして個人的な取引をしているとの疑念を抱いていたのであるから、宇佐美が被告退職後に在職中の関係を利用して、原告らに対し、被告の営業業務を装って、本件売買契約に関し金員を騙取し、あるいは、他の不動産の購入等を持ちかけることが予見できたものと認められる。しかるに、被告代表者は、宇佐美が被告を退職した際、原告らに対し右事実を告げず、かえって、宇佐美に対し被告退職後も引き続き本件売買契約の履行等を担当させたのであるから、被告代表者には、過失があるものというべきである。

したがって、被告には、被告代表者の右行為により、原告らが被った損害を賠償する責任がある。

三  原告らの損害について

前記一の1の事実によれば、原告らは、宇佐美の一連の行為により合計一〇六九万三〇〇〇円の損害を被ったものと認められるところ、原告ら各自の損害はそれぞれその二分の一に当たる五三四万六五〇〇円と推認するのが相当である。

四  過失相殺について

1  前記一の1の事実と証拠(甲一四、証人宇佐美、原告隆本人、被告代表者)によれば、次の事実が認められる。

(一) 原告隆は、本件売買契約締結の前に、不動産売買やローン借入の経験があった。

(二) 被告は、本件売買契約締結に当たり、売買契約書及び重要事項説明書を作成し、宅地建物取引主任者である被告代表者が売買契約書及び重要事項説明書に基づいて取引の内容を説明した。

(二) 宇佐美は、松島の物件の売買契約締結の際、売買契約書や重要事項説明書を作成せず、原告隆に対し、これらに基づいて取引の内容を説明していない。原告隆は、売買契約書等が作成されていないにもかかわらず、平成一〇年三月三〇日ころ、万世橋付近の喫茶店において、宇佐美に対し、松島の物件の売買契約の頭金として二〇〇万円を交付し、同年四月二二日ころ、万世橋付近の喫茶店において、右売買契約の頭金として四〇〇万円、仲介手数料として六九万三〇〇〇円を交付した。

2  右事実と前記一の1の事実によると、不動産の売買契約において、住宅ローンの借入手続が難航しているとはいえ、代金の支払時期等が約定されているのに、一営業担当者の宇佐美から手付金ないし頭金の追加の申出が二回にわたってあることは一般に予想されることではないこと、一営業担当者の宇佐美から売買の対象物件の変更の申出があり、松島の物件の売買契約の契約書等が作成されていないのに、頭金等の支払要求があり、営業の責任者の関与がないまま松島の物件の売買契約が締結されるといったことは通常あり得ないと考えられること、また、取引の交渉等が被告の勝田台店又は本店ではなく、喫茶店で行われていることなどの不自然な事情があり、これに原告隆に不動産取引の経験があることなどを考慮すると、原告隆は、宇佐美の行為が被告の取引に属するか疑いを抱いて然るべきであり、かつ、そのような疑いを抱いた場合には、被告の勝田台店又は本店の責任者に問い合わせるなどその点の調査を行うことは容易であったものと認められる。しかるに、原告隆は、宇佐美の行為が被告の取引に属するか疑いを抱かず、右の調査を行っていないのであるから、原告隆には、宇佐美の行為が被告の取引に属しないことを知らなかったことにつき過失があるものというべきである。

原告隆の右過失の程度その他本件に顕れた一切の事情を考慮すると、原告らが松島の物件の売買に関して新たに交付した合計六六九万三〇〇〇円について三割の過失相殺をするのが相当である(なお、過失相殺は当事者の主張がなくとも裁判所が職権ですることができる。)。

したがって、原告らが被告に対し賠償を求め得る損害額は、それぞれ四三四万二五五〇円となる。

五  損害のてん補について

原告隆が、本人兼原告まき子の代理人として、宇佐美が被告との間においてした手付金の返還額の合意を追認したことを認めるに足りる証拠はない。

したがって、被告の損害のてん補の主張は理由がない。

第四結論

よって、原告らの主位的請求は、被告に対し、それぞれ、前記損害四三四万二五五〇円及びこれに対する不法行為の日以後の日である原告隆については平成一〇年一一月二七日から、原告まき子については平成一一年七月二三日から各支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める部分は理由があるから認容し、その余はいずれも理由がないから棄却する。

(裁判官 丸山昌一)

物件目録

一1 東京都豊島区南池袋一丁目三四番一三

宅地 九六・〇六平方メートル

2 同所三四番地一三

家屋番号 三四番二〇

木造瓦葺二階建共同住宅

床面積 一階 六七・三三平方メートル

二階 六五・六八平方メートル

二1 東京都江戸川区松島三丁目九一九番一八

宅地 六七・八〇平方メートル

2 同所九一九番地

家屋番号 九一九番の一〇

木造瓦葺二階建共同住宅

床面積 一階 四〇・一五平方メートル

二階 三〇・六三平方メートル

(以上)

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